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谷川俊太郎 みみをすます

「あなたはだれ？
　わたしではない　あなた
　あのひとでもない　あなた
　もうひとりのひと
　わたしとおなじような　みみをもち
　わたしとはちがうおとを　きくひと…

　…いま　このしゅんかんにも
　あなたと　わたしは　べつべつのことをおもう

　わたしはあなたになれない
　そのことの　かなしみのあまり　わたしがあなたをだきしめるとしても
　わたしとあなたが　いつか　おなじひとつのりゆうで　なみだをながすとしても
　あなたのゆびの　しもんと
　わたしのゆびの　しもんが　ちがうように
　あなたは　わたしとはちがう　
　もうひとりのひと　
　あなたは　だれ？」

(「みみをすます　あなた」より抜粋)

大学の頃からの友人にすすめられました。
全部ひらがなって意外と読みにくく、でも、その分、
文章を噛みしめるので、強烈に頭に入ってきます。

この「あなた」という詩の途中に
「こんなにちかくにいるのに　かぎりなく
　あなたは　とおざかり
　うちゅうじんのようなかおで
　あなたは　わらっている
　どうして　そんなにも　ちがうのか」
という箇所があります。

こういう経験、皆さんありませんか。
どれだけ心を通わせている彼氏であれ、家族であれ、友人であれ、
必ず、この「宇宙人のような顔でわらっている」
ように見える瞬間って経験ありますよね。

でも、それが当たり前なんですよね。
それを「ちがう、ちがう！」と気にするのはおかしいですよね。
「なんで分かってくれないの！」みたいなのも違いますよね。
だって、「あなた」は「わたし」ではないから。

なるべく、気持ちはシンクロしてほしいですけど、
いつでも絶対一緒である、ことはないですよね。

「あなた」は「わたし」ではないのと同様、
「わたし」は「あなた」ではないのは安心しませんか。
「あなた」は「あなた」で
「わたし」は「わたし」なので。



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